力みすぎて主動筋(動くための力を発揮する筋肉)と拮抗筋(主動筋とは逆の動きをする筋肉)が同時に収縮すると体はかたまります。かたくなってしまった体はすぐには動きません。いったんゆるめてからでないと動けないからです。そうなると、「動こう」と思ってから実際に体が動くまでにタイムラグが生じてしまいます。意識が反応しているのに、体は動いてくれない。そんな状態になってしまいます。

体が動かないだけで意識は反応している状態

ディフェンスではスカスカ抜かれるトマが、抜かれながらも「カバー」と声を出していたことがありました。あのときのプレーについてトマが一言。「動きは見えていた」と。相手に何をされたかわからないわけではない。見えているし、意識は反応している。でも体が動かない。あのときのトマがまさにそんな状態だったと思います。トマの場合はそれが高頻度で起こっていますね。

前かがみ

実は私もディフェンスをするときはずっとそういう感覚を持って動いていたので、トマの気持ちがよくわかります。ずっと「来るのはわかっているのに動けない」という状態。姿勢や動作が改善されたときに急にディフェンスができるようになったのは、意識の部分ではもともと反応できていたからだと思います。

ただ力を抜けばいいというわけではない

しかし、力まず動きたいからといって、単純に力を抜けばいいということではないです。姿勢によっては、ただ立っているだけで必要な筋肉までゆるみ切っていることがあります。筋肉はゆるみきっていると収縮しにくくなります。その状態から動き出すには、ゆるみ切った筋肉をいったん引き伸ばし(姿勢を作り)、それから収縮させる(動き出す)という二度手間が必要になります。すると動き出しが遅くなるわけです。

トマのパス

もしくは本来使うべき筋肉と違う筋肉を使って動くことになるか。その場合は体が大きな力を発揮できない(動きが遅くなる)だけでなく、無駄に疲れやすくなり、おまけに怪我のリスクが高まるということになります。

姿勢ですぐに動ける状態を作る

ちょっとだけ引っ張った状態(テンションがかかった状態)にしてやると収縮しやすくなるので、その状態を「姿勢」などで作り出します。パワーポジション、トリプルスレットなどの姿勢が大切だと言われる理由はこのあたりにあると思います。あの姿勢の「形」だけに目を向けている人はその姿勢の恩恵を十分に受けられていないはず。形が重要なのではなくその姿勢を作ったときの「体の状態」が重要なのです(形だけなんとなく真似しても実際に動きやすくなってなければ真似する意味ないよ)。

逆にいい状態がつくれるのであれば、パワーポジションではなく突っ立っているように見える姿勢だったり、めちゃくちゃ腰を低くさげた姿勢だったりしてもOKです。基本的にはリラックスしてやや膝を曲げたくらいの姿勢がいいと思うけどね。

今回の一連の記事はトマのことを例に出しましたが、トマ以外にもあてはまる人はいっぱいいると思います。勉強するのが少し大変ですが、相手よりも速く動けるようになるために、こういったことも考えながら練習を積んでいきたいです。

お手本にするなら、じょーの動作や姿勢がオススメ。動きの無駄が少なく、何をやらせてもコンパクトにまとまっています。特別スピードがあるようには見えないけど相手との相対的なスピードはいつも速いし(「速くて見えない」と感じることもある)、「力を入れている」という印象をうけるプレーも少ない。体の力みが少なく、リラックスしてプレーしている証拠ですよ、あれは。