チノさんのドライブ動作(CIMG3848の3:48)。
チノドライブ

このドライブ動作を見て昔を思い出した。まだ「抜きの動作」が実感できていなかった頃。力を入れまくって動いていた頃(4~5年くらい前)。私は田臥勇太選手のドライブの動き出しを真似したくて練習していた。動画のチノドライブと似たようなドライブだ。

田臥ドライブを練習していた頃

当時、私は足に力をいれることでしか前に進めなかった。でも田臥選手のドライブは、力を入れるというよりは逆に力を抜いて低い姿勢をつくり、ディフェンスを抜き去っている感じがする。どうしてもその感覚がつかみたくて、一時期そればかり練習していたときがあった。

練習を始めてからしばらくして、ついに感覚がつかめた。忘れもしない。あれはT川さんと田上の体育館にバスケしに行った時のことだ。初めて参加したそのチームの練習はなかなか人数が集まらなくて自主練習の時間が続いた。その途中、ついに田臥ドライブに似た感じで動くことができた。生まれて初めての感覚に興奮した。よそのチームの練習であまり騒げなかったので、興奮をこらえて何度も何度も動きを繰り返した。

それからほどなくして「抜きの動作」の感覚を実感することができた。夜、田んぼ道を走っているときにやってみたら急にできた。いくらやってもできなかったのがいきなりできるようになって、このときは大声で叫びたくなるほど興奮した。叫べなかったけど声を出すのが我慢できなくて「うわ!」「これやべー!」とか小声で言ってた気がする。田んぼ道の真ん中で変な動きをしているし、ボソボソ言ってるし、完全に不審者だった。

これが私の動きが変わるきっかけになったできごと。ここからどんどんバスケットボールへの理解が深まっていった。

超基礎技術も大まじめに練習する

チノドライブは動画を見ればわかると思うけど、これは人によっては特別練習するような動きではなく自然とできてしまう動作だ。うまい人は当たり前のようにやっているし、ヤマザキなんかも練習でよくやっている。でも、私やチノさんのように、自然にはできない人もいる。できないなら練習するしかない。できる人がやることのない練習でも、私たちは取り組まなければいけない。

「当たり前こと」も練習する

できる人にとってはできて当たり前。でもできない人にとってはそれが難しいことだったりする。当たり前の基準は人それぞれ。もし自分が「できない人」なら、その誰かにとってはできて当たり前のことも、個別に練習して身につけていく必要がある。

「当たり前のこと」を練習して身につけていく。この考え方ができると上達していける。

例えば、チェストパス。誰でもできていて当たり前の、基礎中の基礎だ。しかし実は、チェストパスがしっかりできていない人も少なくない。そういう人は改めてチェストパスの練習をしなければいけないが、そんな基礎的な技術をここにきて改めて練習するという発想がなかなか生まれてこない。それが「できて当たり前」と思ってしまっているからだ。だから本当はできていないことでも、そのまま放置されてしまう。それでもなんとなくバスケはできるので、ずっとまともなチェストパスができないままプレーし続けることになる。

うーん。これはかなりいいことを書いている。この記事は少なくとも3回読んだほうがいい。

走る練習をしたことがあるか

「走ること」にも同じことが言える。バスケの練習として走り方の練習をしたことがある人はどれだけいるだろうか。脚力を鍛えるために走る練習をしたことがある人は多いだろうが、走り方の練習として走る練習をしたことがある人は少ないだろう。走り方にもいい走り方と悪い走り方があり、悪い走り方をしているなら練習して改善する必要がある。しかし走るという超基礎動作を改めて練習しようと思える人はあまりいない。

そういうところを大まじめに練習できる人が、目に見えて上達していけるのだ。

私たちはうまい人たちが当たり前のようにやっているプレー(動き)を、同じようにできて当たり前な感じでやることができない。その動きをしっかり分析して、ゆっくりやってみたり速くやってみたりと試行錯誤を重ねながら、練習して身につけていく必要があるのだ。

バウンズパス

誰も教えてはくれない

うまい人がなんの練習もしなくてもできてしまっていることを時間をかけて練習しなければいけないのは悔しいが、そこを嘆いてもどうしようもない。うまい人たちと戦うなら、やるしかない。しかし残念なことに、うまい人からの指導は期待することはできない。なぜなら、その自分にとって「できて当たり前のこと」が、ある人にとっては「練習を積まなければできないこと」だとは認識できないから。自分が当たり前にできていることを練習することの意味がわからないだろうし、やり方を聞かれても答えられないのである。

自分で気づき練習する

うまい人は自分がやっている感覚を人に話すことはできるだろう。しかしそれを他人が理解できる形に変換できないことが多い。そもそも「できない」のがどういう状態か理解できないし、当たり前のことすぎて「どうやったらできるか」なんて考えたこともないから。でもそれは仕方がないこと。だって特に練習することもなく、気がついたらできてしまっていたんだから。だから、こういうことは自分で気づいて練習していくしか無いのだ。

自分の動きを振り返る機会を

他の人にとってはできて当たり前のことでも、自分はできていない可能性がある。このことを知るために、自分のプレーをビデオで確認することをオススメしたい。ビデオは自分を手軽に客観視できる、非常に便利なツールだ。動いているときの感覚だけで自分の動きを把握するのではなく、観客として見るように自分の動作を観察する。感覚と動きにズレがあれば一発でわかる。

「下手糞の 上級者への 道のりは 己が下手さを 知りて一歩目」

イズミスリーポイント

できて当たり前の超基礎技術もあらためて見直して、改善点があればしっかりと練習していく。そういう覚悟を持って練習し続けていけば、自分のより基礎的な動きの質を高めていくことができます。基礎動作の質が高まれば、シュート・ドリブル・パスといった技術にもいい影響が出るし、ディフェンスでも今まで以上に動けるようになるはず。私も引き続き練習していきますので、一緒に頑張っていきましょう。