今回も「動き」について。「速い動き」をしている選手は「速く動こう」と思って動いているわけではないという話です。

トマ並みに動きが遅かった過去

私も昔はトマみたいな姿勢、動き方をしていて、かなり動きが遅かった。ディフェンスでは目の前のオフェンスの動きはしっかりと見えていて、これから動く方向が完全にわかっているのに、体を動かしたくても動かないという状態。ルーズボールへの反応も同じ。目で見えているし頭では飛びつかないといけないことも理解しているのに、体が動かない。

オフェンスでは勢いにまかせて動くのが基本。勢いを使わないと速く動けなかった。速く動こうとして下半身に力を入れまくって床を強く蹴っていたから、たった1試合やるだけでもふくらはぎがつりそうになる。動きに勢いをつけるために体を大きく倒して動いていたから、足が引っかかったときに簡単に転んでしまう。思い返すととても残念なプレーをしていた。

練習試合でのヒトコマ

今も特別動きが速いわけではないけど、以前に比べたら「他の人よりも速く動けている(出し抜けている)」と感じることが多くなってきた。動く感覚は昔に比べてずいぶん変わってきていて、変化の過程で気づいたこともたくさんある。

速い人は速く動こうとしていない

ディフェンスを出し抜くために、速く動こうとしてしまいがち。でも本当に動きが速い人は「速く動こう」なんて思ってはいない。うまい人はみんな動きが速いけど、それは速く動こうとしているから動きが速くなっているのではなくて、本人としては普通に動いているつもりだけど、結果として周りと比べたら動きが速くなっているというだけだ。これに気づいたことが、動きを改善するのに大きく役立った。

速く動こうとすれば逆に動きは遅くなる。体に無駄な力が入ってしまうから。速く動こうとするとディフェンスに動きがばれる。予備動作(重心移動)が大きくなってしまうから。むしろ控えめに動いていたほうが、結果的には速くなることが多い。

バスケットボールの狭いコートでディフェンスを出し抜くためには、「助走が必要な速さ」は使えない。瞬間的にスッと入っていける速さが必要だ。そういう動きは「速く動く」ことを意識するのではなく、気配や無駄な予備動作を無くし、コンパクトな動きで瞬間的に方向転換する、または止まっている状態から動き出すということをしなければいけない。そのためには「速く動こう」という意識は捨てなければいけない。速く動こうとすると「助走」をしてしまうから。

もちろん今よりも速く動けるようになるための努力は必要。でもそれは、今コートの中で「速く動こう」と思って動きを速めようとするのではなくて、もっと長期的な取り組みとして「動作の質を高めて動きを速くする」という方向で考えたい。速く動こうと思って頑張った結果、仮に速く動けたとしても異常に疲れるし、ケガのリスクも高まると思う。普通に動いているのに速い。そういう動きを目指して、これからも練習していく。